おすすめ酒レポート 焼酎編

知覧 武家屋敷

No.34 2010.11.1

知覧 武家屋敷

製造元 知覧醸造
原料 さつまいも・米こうじ
アルコール分 25
蒸留  
お酒のタイプ

今年も酒を、手に提げて

の焼酎、ラベルがまず素晴らしい。穏やかな山々の懐に静かに佇む武家屋敷。
生け垣、石壁、棟を連ねる屋敷の絵からは、質朴だが誇り高い薩摩武士たちの暮らしの温もりが伝わってくるようだ。
即!!購入してきた「武家屋敷」。おんじょ(=年寄り)は年と共に我慢を忘れるというが、まさに小生も例外ではない。帰宅するやさっさと開栓してみた。こころ嬉しくなるような豊かな香りがただよう。一口、グラスで味わった。そして驚いた。この焼酎は、骨格が太く屹立している。それでいて激しい何ものをも見せていない。母ヶ岳、後岳の山裾のなだらかさを思わせるやさしい表情を湛えている。生でいただくと、穏やかなのだがなぜか峻厳ともいうべき「強さ」の内包を感じる。つぎに、お湯割りでいただく。芋焼酎の真骨頂は、やはりお湯割りだと納得する味わいに頬が緩む。背筋の伸びたまっすぐな焼酎だ。つねに足下に基本を見定めた造りの酒だ。透明感があるが決して透明ではない。質実の詰まった、造り手のたましいが豊かに匂い立つような焼酎といえよう。
言葉を失うほどの美味しさだった。飲み方を選ばない焼酎だけれど、やはり基本はお湯割りでしょうね。知覧は「薩摩の小京都」といわれ観光名所としてしられる町だ。
武家屋敷の東端にある森重堅氏庭園の背後には知覧城の出城であった亀甲城跡があり、頂上には南朝の忠臣知覧忠世の顕忠碑がある。麓川沿いに、ずずっと西に目を転じれば、全国でも珍しい水からくり人形の奉納で有名な豊玉姫神社が鎮まっている。穏やかで豊かな緑に満ちた町である。そして武家屋敷から約2キロほどには「知覧特攻平和会館」がある。数年前訪問したときに貰ったパンフレットにこうあった。
「観光とは、光りを観ると書きます。この光りとは何でしょうか。ある人にとっては美しい自然であり、ある人にとっては重々しい歴史なのかもしれません・・・。」
先の大戦末期、この地から飛び立ち開聞岳に翼を振って南の海に散華していった若い命のことを忘れてはならないと思う。
知覧は薩摩半島内部の山間にひろがり、また南端では東シナ海に面している。農耕民と海洋民族の習慣習俗が交錯し融合してきた土地でもある。「地=ち」「原=ら」「海=み」がこの土地名の語源だという。こうきくと、のんべいは、「焼酎も肴も旨い」と短絡的に連想してしまうのだが、まあ、それは正しいというべきだろう!!


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